2007-08-26

卒後臨床研修の地域格差

社説:臨床研修の連携 医師確保の手掛かりに
秋田魁新報社 秋田のニュース:社説(8/25)
http://megalodon.jp/?url=http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp%3fkc%3d20070825az&date=20070826081655

秋田大医学部付属病院(秋田市)と東京医科歯科大医学部付属病院(東京・文京区)が、医師となる際に義務付けられている卒後臨床研修で連携することになった。秋田大の研修医は首都圏の医療を、東京医科歯科大の研修医は地方の医療を体験できるというメリットがある。本県を含め、地方の医師不足は深刻な状況にあるだけに、首都圏の研修医に地方の実態を知ってもらう絶好の機会であり、医師確保の手掛かりにしたい。地方の深刻な医師不足の原因は、平成16年度に始まった卒後臨床研修だった。医師免許取得者に2年間の臨床研修が義務付けられたが、研修先を自由に選べるため、研修医の多くは大学に残らず施設が整った大都市の病院に流出した。その結果、医師派遣の重要な役割を担ってきた大学自体が医師不足に陥り、派遣先の地方病院から医師を引き揚げているためだ。秋田大と東京医科歯科大が共同で実施する「広域連携臨床研修プログラム」は、国立大学法人同士としては全国初のことであり、その試みを高く評価したい。具体的には、2年目の研修医を3カ月ごとに1人ずつ相互に派遣。秋田大に派遣された東京医科歯科大の研修医は、3カ月のうち1カ月を横手市立大森病院で研修するという。地域医療の最前線での勤務は貴重な体験となるであろう。東京医科歯科大は研修先として人気が高く、毎年100人を超す研修医を受け入れている。これに対し本県は、秋田大を含む研修指定13病院全体で研修医は年60人から70人ほど。募集定員の半分程度しか埋まっていない。秋田大の研修医も毎年10人前後にとどまっている。さらに問題なのは、県内で臨床研修を終えた医師の本県にとどまる割合が下がったことだ。このような状況が今後も続けば、本県医療は崩壊しかねない。県や県医師会、秋田大などが努力を続けているが、決定的な打開策を見いだせないでいる。そんな中、政府は臨床研修制度の見直しに着手した。地方の医療界を中心に批判が高まっているためだ。検討されているのは、指定病院の受け入れ定数削減だ。それによって大都市圏から地方へと研修医の誘導を図ろうというもので、来年度からでもぜひ実施すべきである。秋田大と東京医科歯科大の連携も、地域医療への理解を深めてもらう意味で制度に一石を投じたものといえ、その拡充が求められる。東京医科歯科大から派遣される研修医の数が限られ、期間も決して長いとは言いがたいが、その中から地域医療に身を投じてみようかと考える医師が生まれる可能性がある。すぐに成果が期待できるわけでないにしろ、地方の実態を理解する医師が一人でも増えることは、決して無駄にはならない。実施に当たっては、秋田大病院そして大森病院での研修内容を充実させる必要がある。さらに、滞在中の生活面も含めた研修医のバックアップ体制を関係機関に望みたい。地域医療の理解だけでなく、地方で暮らすことの魅力の一端に触れてもらうことが、長い目でみれば医師確保と県内医療充実につながる可能性を秘めると考えるからだ。
(2007/08/25 11:24 更新)

問題の本質はいったいなにか?おそらくは秋田大医学部としては,何とか卒業生を自分のところの付属病院の研修医に確保したいのでしょうが,記事の中にもあるように研修後に自大学に残るか?ということが問題です.そのためには研修医の労働環境もそうですが,大学病院を支える非常勤医および大学院生さらには秋田県内全体の医師の労働環境を改善し,また彼らにこそ連携臨床研修プログラムなどが必要なのではないでしょうか?医学部学生時代に将来自分の大学病院に残って地域医療を支えるという動機付けが一番有効と考えます.

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