2007-08-29

カナダの医療制度

隣国なのにUSAとは正反対のカナダの医療についてです.http://nsmtl.blogspot.com/2007/08/sicko_26.htmlの中で世界の各国との医療との比較http://megalodon.jp/?url=http://www.city.fukuoka.med.or.jp/jouhousにカナダが含まれていないのは,医療政策が州および準州主導でおこなわれているためと推測されます.
カナダでは「医療と教育はすべて平等」という理念のもと、医療については国民皆保険体制が確立されています。財源は一般税からで、その他企業雇用主への社会保障税、州の一般財源、連邦政府補助金が財源となっています。カナダの公的保険制度の歴史は1914年サスカチュワン州の北方の小さな町サニアで医師への医療サービス料金や公衆衛生費を税金で賄う制度を導入したことに遡ります。この公的保険制度はその後曲折を経て、1968年当時のピアソン政権による連邦基金を受け皿とした皆保険制度メディケア法の制定へとつながりました。1995年カナダ保健・社会財源移転(The Canada Health and Social Transfer: CHST)が導入され、連邦政府が医療保健費と福祉費を一括して州に移転しその使途は州の自主裁量で決められ,各州で医療に関する広範囲な計画・実施を責任をもって行い連邦政府は補助金分担を通じ各州の医療政策に間接的に関わることとなりました。
現行の「カナダ保健法」の基本5原則は,
1. Public Administration 「州政府とその行政による管理」:各州の行政が 非営利原則に基づき管理を行う。
2. Comprehensiveness 「包括的医療サービス」:病院、医師、医療関係者にかかわる必要全てのサービスを医療保険でカバーする。
3. Universality 「普遍主義」:カナダの全住人に対して医療サービスが施される。
4. Portability 「全国的受給権」:カナダの住人は、どの州に移動しようとも 医療サービスを受けることができる。
5. Accessibility 「平等的受給権」:カナダの住人は医療サービス機関を利用でき差別なく可能な限りのサービスを経済的負担なく受けることができる。


カナダの医療システムの特徴として一般医(General practitioner、カナダの 全医師の約50%)によるファミリー・ドクター制が挙げられ、一般医から専門医の紹介という医療ネットワークを確立することにより医療財政の効率化を図ろうというものです。2003年、カナダではGDP(国民総生産)に占める医療費の割合は9.9% でした。 OECD (Organization for Economic Cooperation and Development:経済協力開発機構) 加盟国30カ国のなかでは、比率の高い順からアメリカ合衆国15.0%、スイス11.5%、 ドイツ11.1%、アイスランド10.5%、ノルウェイ10.3%、フランス10.1%で、カナダは 7番目でした。
輝きCanada カナダの高齢者向け医療・介護関連サービスから一部抜粋改変 Medlink Canada Inc. http://megalodon.jp/?url=http://www.mlinkcanada.com/kagayaki_med_care.html&date=20070828145401

カナダ各州準州(医療制度)
Alberta(Alberta Health Care Insurance Plan), British Columbia(Medical Services Plan), Manitoba(Manitoba Health), New Brunswick(Medicare), Newfoundland and Labrador(Newfoundland and Labrador Medical Care Plan), Northwest Territories(NWT Health Care Insurance Plan), Nova Scotia(Medical Service Insurance), Nunavut(Nunavut Health Care Plan), Ontario(Ontario Health Insurance Plan), Prince Edward Island(Medicare), Quebec[Assurance maladie (Medicare)], Saskatchewan(Saskatchewan Medical Care Insurance Plan), Yukon(Yukon Health Care Insurance Plan)
私が1997年-2001年に居住していたモントリールが属するケベック州では
ケベック州医療保険制度http://megalodon.jp/?url=http://www.cocomontreal.com/htm/columns/life_insuarance.htm&date=20070828150927
アカデミー婦人会作成,モントリオールガイドブックからhttp://megalodon.jp/?url=http://www.geocities.jp/livemontreal/medicine.htm&date=20070829120203
CLSC http://www.clscmetro.qc.ca/en/services/health_social_services/

BC州政府、医療制度に関し州民の声を募集(Mapletown 2006年10月02日更新http://www.mapletown.ca/news/news_detail.php?news_id=112890

急性心筋梗塞後の侵襲的心手技を受ける機会と死亡に対する社会経済学的状態の影響 Effects of Socioeconomic Status on Access to Invasive Cardiac Procedures and on Mortality after Acute Myocardial Infarction. David A. Alter, and others (N Engl J Med 1999; 341 : 1359 - 67 : Special Articlehttp://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/341/341oct/xf3411359.htm (オンタリオ州では,カナダの国民皆保健医療制度にもかかわらず,社会経済学的状態が,急性心筋梗塞後の 1 年目までの死亡率にだけでなく,心臓の専門医療サービスを受ける機会にも大きな影響を与えていた.)
http://en.wikipedia.org/wiki/Canadian_and_American_health_care_systems_compared
http://en.wikipedia.org/wiki/Medicare_(Canada)

もう少し詳しい資料としては以下の論文
カナダにおける医療と介護の機能分担と連携 新川敏光 http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18095206.pdf
カナダ福祉国家研究の地平. 新川 敏光 http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/519/519-1.pdf

8月13日にバンクーバー在住のカナダ人男性と結婚された女性が里帰りの際,ご夫婦で私のところに受診されましたがやはりaccess制限がカナダの医療制度での問題点と話されておりました.私の印象としてはhttp://nsmtl.blogspot.com/2007/07/blog-post_17.html

3 comments:

Anonymous said...

財源である消費税は15%と高いのですね。

MTL said...
This comment has been removed by the author.
MTL said...

間接税は,連邦・商品サービス税(Goods and Services Tax:GST)税率は6%と州・売上税(Provincial Sales Tax:PST)アルバータ州を除く各州で、消費、使用の目的で購入した有形動産の大部分と特定のサービスについて課されます.オンタリオ州8%、BC州 7%,ケベック州6.5%,ニューファンドランド・ラブラドル州、ニューブランズウィック州、ノバスコシア州などでは連邦GSTと組み合わせたHST (Harmonized Sales Tax)として課されます(14%).アルバータ州は石油産業で潤っておりますので.
カナダはひとつの国というより,州政府により政策もかなり違います.ケベック州は他の州より大きな政府で,CLSCを配置し医療にお金をつぎ込んでおります(所得税はかなり高いですその分低所得者には還付しております,私もかなり還付してもらいました).