2008-04-28

地域医療を守る地方議員連盟の設立総会に参加してきました。

グリーンシード21(http://homepage2.nifty.com/greenseed21/ )とMJLnet(http://mjl.matrix.jp/ )に参加している上富良野町議会の金子益三議員が発起人となり、地方議員による地域住民のための議員連盟が平成20年4月26日に超党派で結成され,設立 総会が開催された。会場は京王プラザホテル札幌2Fの一室だが,テレビ取材も何社かあり多くのマスコミ取材者も入り乱れて会場はほぼ満員の状態。出席者名 簿では40名の総会出席者の多くが北海道の地方議員(町議あるいは名寄,江別,富良野,紋別,夕張といった地方都市の市議),そのほか町職員,医師などで あった。


広瀬寛人富良野市議会議員の司会進行で,14:00に開会,金子益三議員による発起人挨拶のあと,設立総会に先立ち,以下の3題の基調講演が行われた。

1.夕張希望の杜の村上智彦理事長による「夕張市における地域医療再生」

村上氏の今までの地域医療の経験(岩手県藤沢町民病院,湯沢町保健医 療センターなどの見習うべき点),夕張医療センターの理念(1.地域の医療を守るだけでなく,保健・福祉と連携して地域包括ケアを実現。2.高齢化社会に おける町づくりの中心となるべく,他職種との連携の中で雇用や高齢者の生きがいを作る事で高齢化社会のモデル化を目指す。3.与えるばかりではなく,行政 や住民にも参加してもらい自ら作り上げていく町づくりを目指す。)と取り組み(1.在宅療養支援診療所 2.コンビニ受診の抑制 3.介護老人保健施設  4.医師招聘システム 5.北海道薬科大学との連携 6.かかりつけ医 7.他業種との連携 8.雇用創出と人材育成)を具体的に提示されて,医師の待遇 の改善を含めて,住民,行政の意識改革の必要性を訴える内容であった(「兵庫県立柏原病院の小児科を守る会」についても,成功例の1つとして取り上げてい た)。

2.城西大学経営学部の伊関友伸准教授による「地域医療崩壊の時代における地方議会議員の役割」
崩壊する地域医療の現状を2つの問題点(自治体病院財政の危機と医師不足問題)から分析し,とくに医師不足問題が財政的な危機以上に,地域医療の存続その ものを脅かす問題となっており,それは多くこと(新臨床研修制度の導入,医局制度の崩壊,医療の高度化,仕事の増加=書類の多さと説明責任,低い医師給 料,患者のコンビニ医療指向,行政の無理解,医師の劣悪な労働時間)に起因しているとした。
また,医師と市民,医師と行政の病院に対するとらえかたの違いにより,行政の論理,住民の論理,医師の想いがぶつかり合い不幸が生まれるとし,相手の立場 を考え議論し,人と人の心を「つなぐ」ことの重要性を示した。地方議会議員の役割として健全な外圧と議員間の議論の必要性をあげていたが,具体例を挙げて 勘違いの外圧(暴言)による自治体病院医師の退職を招く危険を述べた。
村上氏と同様に「兵庫県立柏原病院の小児科を守る会」の成功と足立智和記者の丹波新聞(2007年3月21日)2つの提案という記事(http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-1235.html )をとりあげ,自治体病院の危機や医師不足問題が地域の民主主義の質を向上させる機会であり,地域の民主主義の主要なプレイヤーとして地方議会議員は重要 な役割を担っているとし,「地域医療の破壊者」ではなく,「地域医療再生の担い手」のひとりとして頑張ってほしいと激励した。

3.「地域医療を守る地方議員連盟」の発案者である上富良野町立病院の兼古稔副院長による「何故医師は立ち去るのか-地域医療再生のために-」
地域医療の崩壊の原因として,1.新臨床研修医制度(と人事問題)2.過剰な救急負担 3.地元住民の不信 4.医療訴訟の急増をあげて,これらの複合が医師の逃散を招いているとした。今回の講演では1.と4.に絞った話がされた。
1.新臨床研修医制度(と人事問題)では,2004年度からはじまった新臨床研修医制度はその理念は立派であったが,いわゆる「パンドラの箱」を開けてし まい,急速に大学医局の人事権の低下を引き起こし,大学病院医師および勤務医の過酷な労働環境が故に,大学医局人手不足そして大学派遣先病院からの医師の 引き揚げの現象が生じていることを説明した。4.医療訴訟の急増では,1999年杏林大学割り箸事件と2004年福島県立大野病院事件の詳細な報告と医療 訴訟報道の問題も指摘した。
現状では,一般住民と医療者の医療に対する意識の違いが大きすぎており,地域医療を守るためには,住民が医療についてもっと学び,地域医療を守る意識を持つことが重要であり,そのためには小さい地域単位での地域医療の勉強会の必要性を主張した。

3題の基調講演のあと,地域医療を守る地方議員連盟の規約の確認と役員選出が執り行われ,会長に金子益三議員が満場一致で選出された。
事業計画として,第二回の総会として,平成20年7月に夕張市にて開催される予定が報告され,地域医療を守る地方議員連盟の設立総会は閉会された。

設立総会が終了後,場所を移して懇親会が,午後6時30分から,札幌市中央区南7条西4丁目2-11 Showビル1F 炭火deジンギスカン「しまだや」にてとりおこなわれ,MJLnetに参加する市議会議員と何名かの医師も合流した。

その雰囲気は,

ブログ「新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで」 を参照

懇親会での様々な議員さんたちの話し合いを聞いていると、非常に高い危機意識があり、問題解決の手段を求めて「行動している」という事が良くわかりました
このような活動する議員さんたちに是非とも頑張ってほしいです そしてこの議員さんたちから、多くの議員さん、そして道民の皆さんに「北海道の医療」を守り、「日本総柏原化」のさきがけになっていただければと思います
1次会の閉めの乾杯の際に、千葉からいらっしゃった有名な先生(Dr.)が「4月26日、今日が地域医療再生の日であったといわれる事になるでしょう」
とおっしゃっておりました。
そのとおりだと思います。
この北海道の動きが、全国規模で展開され・・・日本の医療が改善の方向へ行くことを期待したいと思われるかた、応援よろしくお願いいたします

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「新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで」で述べられている千葉から来られた有名な先生とは千葉県立東金病院院長の平井愛山先生,そして同じ 千葉県から四街道さくら病院院長の林 克英先生も参加された。北海道に引き続き千葉でも地域医療を守る地方議員連盟の設立が予定されているとのことであ る。

全国にこのような活動が広がり,われわれ医師が積極的に関わっていくことが地域の医療崩壊を食い止めるためにやれることの一つであることを認識し,全国医師連盟のメンバーの今後の活動にも期待して今回の報告を終える。


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地域医療守る議員連盟:あす札幌で設立総会 /北海道

毎日新聞 2008年4月25日 地方版

医師不足など地方が直面している医療問題を考える「地域医療を守る地 方議員連盟」が26日、札幌市で設立総会を開く。道内の市町村議30人が名を連ね、超党派の広域議員ネットワークとして情報交換や勉強会を進めていく方 針。連盟は、上川管内上富良野町の金子益三町議(39)が知り合いの議員たちを通じて参加を呼びかけたところ、道北や道東を中心に道内のほぼ全域の23市 町村、30人が参加を表明。ほかにも50人が趣旨に賛同した。
参加議員の地元の多くは医師不足や自治体病院の閉鎖など深刻な問題を抱えている。道のまとめでは、道内に約1万2000人いる医師のうち半数が札幌圏に集 中するなど地域間格差が激しく、道内の市町村立病院の7割が医療法で定める医師標準数に満たない状況にある。呼びかけ人の金子町議は「北海道の地域医療を 何とかしなくてはならないという思いで声を上げた。地域医療のために議員がやるべきことは何かを考えたい」と話している。設立総会では夕張市の医療法人財 団「夕張希望の杜」の村上智彦理事長が講演する予定。【鈴木勝一】

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