2008-01-18

医療安全調査委員会問題についての解説

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医療事故調査 - 厚生労働省試案や自民党案ではダメ !!

私たち医師は、厚生労働省の「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案 - 第二次試案 -」をもとにした自由民主党の「診療行為に係る死因究明制度等について」の制度化が日本の医療崩壊を決定づけてしまう恐れが強いため、これに反対します。

今考えられている制度では、次のような問題があります。
1. 科学的な調査で真実が解明されるということは期待できません。
2. 現在の日本の医療資源からは、この制度に充分なマンパワーも予算も割くことはできません。
3. 不充分な調査結果は、患者さんや日本に暮らす皆様と医療との間の不信という溝を拡大します。
4. 不充分な調査しかできないにもかかわらず、厚生労働省は強大な権限を手にします。
5. 医師は、様々なリスクを伴う医療の現場で、働き続けることができなくなります。

- 反対する理由、不充分な検討で医療事故を調査する制度を創設する危険性について -

はじめに

このたび、厚生労働省は「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」を開いて、「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関 する試案 - 第二次試案 -」を作りました。それをもとに、自由民主党の「医療紛争処理のあり方検討会」が「診療行為に係る死因究明制度等について」という、医療に関わる事故で患 者さんが亡くなった時に、それを調査する制度を作る考え方を公表しました。

医療に関わる事故で患者さんが亡くなることは、大変悲しく残念なことです。患者さん本人にとっては無念でしょうし、ご家族もつらい思いをされるでしょう。同時に医師もまた、患者さんを助けられなかった悔しさに打ちのめされるのです。

医療の中で起こった不幸な出来事について、科学的に原因を解明し、医学医療の発展と再発防止に役立てることを、患者さんやそのご家族はもちろん、日本に暮 らす皆さんが望んでいると思います。そうすることで皆さんが医療に抱いている不信感が消え、医療への理解が深まり、医師と患者さんとの間の溝が埋まるで しょう。そしてそれが医療の発展、つまり皆さんの生命や健康のためになるのです。

しかし、考えられている「医療に関わる事故で患者さんが亡くなった原因を調査する制度」は、その理想とは反対に、いま問題になっている医療崩壊を決定的なものにしてしまうかも知れないと、私たち医師は心配し、反対しています。なぜでしょうか。

1. 真実の究明にならないこと

一つ目ですが、厚生労働省と自由民主党が考えている制度では、医療事故の真実を解明することがかえって難しくなることを心配しています。

医療の現場で、何か不幸な出来事が起こるとき、それは、それぞれの患者さんに様々な病気やけがの状態があり、そして医療現場の体制、医療の制度や政策、医 学の水準など、様々な要素が複雑に絡み合って起こります。一人の医師が悪いから、劣っているから起ったとは言えないことが多いということを、皆さんによく 知っていただきたいと思います。医師個人に原因や責任を追及しても、真実に迫ることはできないのです。

ところが、現在考えられている制度では、医療事故が起こったとき、医師個人の責任を追求し処罰を加えることも有り得ることが前提で調査することになってい ます。その処罰は、たとえば医師免許の停止や剥奪などの行政処分というペナルティや罰金刑や禁固刑といった刑罰であり、さらに患者さんやそのご家族が医師 を訴えて損害賠償金を払わせるということも含んでいます。

医療では、確実な結果が得られるということは少なく、患者さんごとに起こっている病気やけが、治療の効果や得られる結果は様々です。予想できないことは、 いつでも起こっています。医療に完全はありません。不幸な出来事が起こったとき、最善を尽くしていても、後から振り返ってみれば、反省できることはいくつ もあるでしょう。

不幸な出来事が起こったとき、医師も苦悩し反省します。そして学習し次に活かそうと努力します。そのためには起こったことを正確に報告し、科学的に調査す ることが必要です。しかし、後から振り返って調査し反省したことが厳しい処罰につながるとしたら、不幸な事故が起こった現場から、正直な報告がなされなく なってしまうおそれがあります。

処罰を前提にしましたら、誠実な調査は期待できません。

2. 調査をする医師もいなければ費用もないこと

次に、忘れてはならないことですが、調査には医師が必要です。解剖を行い医療の記録から真実を見出すことを医師以上の能力をもってできる人がいますでしょうか。医師以上に医学や医療の技術、現場の実務に精通した職業の人はいますでしょうか。

ところが、現在の日本の医療は、医師や医療スタッフが先進国といえないほど不足していて、医療にかける国全体の費用はぎりぎり以上に切り詰められた中で、 もう持ちこたえられなくなっています。今目の前にいる患者さんの医療だけで手一杯なのに、多数の不幸な出来事を調査する余裕はありません。調査のために必 要な解剖を行う医師は全国に少なく、調査検討の実務を行う医師など、今はわずかしかいません。

現在考えられている制度では、調査する組織を厚生労働省の下に置くこととされています。しかし、薬害や年金の問題で見られますように、厚生労働省が行う調査には大きな問題が生じることがあります。

もし制度を作ったとしましても、働く人がいなければ、かけることができるお金もない中で、厚生労働省が行う調査が不充分で不完全なものになることを心配しています。

3. 医療に対する不信感が大きくなること

今までに述べましたことの結果、せっかく調査制度をつくっても不充分な調査にしかならず、真実は分からないままになってしまいます。患者さんやそのご家族 が調査の結果に納得することはないでしょう。医療側にとっても真相が分からないままでは、医療事故の再発防止に役立てられることはありません。皆さんが医 療に向ける不信感は強くなり、医療の現場は今よりももっと混乱してしまいます。

4. 役所の権力はものすごく大きいものになること

医療を治めている厚生労働省の力はものすごく強く大きいものになるという心配があります。

もともと、厚生労働省の仕事は専門性が高い分野とされ、法律によって大きな裁量が与えられており、それだけ国会の統制が及びにくく、国民の監視が届きにく くなっています。それに加えてこの制度ができましたら、制度を管轄する厚生労働省は、医師を調査し様々な形での処罰につながる力を一手に握り、今まで以上 に大きな力で、医師を管理し支配することになるからです。

そうなりますと、医師が自分で勉強し、努力し、反省し、倫理観を高めていこう、よい仕事をしようという動機よりも、医師を統率する厚生労働省の強い力が医 療を支配するでしょう。管理され束縛されるだけで自分の意思や努力が認められない世界では、志を高く持って仕事をする人はいなくなってしまうでしょう。

5. 医師が辞めてしまうこと

最後に、このまま制度ができますと、事故が起こる危険性が高い医療現場を辞めてしまう医師が増えることを心配しています。

憲法では、刑事事件の場合、「言いたくないことは、言わなくてもよい ( 黙秘権 )」という権利が保障されていて、これは基本的人権として世界各国で共通の考え方です。

この考えられている制度では、医師は、医療事故が起こったとき、自分に不利になることもすべて明らかにしなければなりません。この制度による調査の結果 は、そのまま刑事手続にも使われ、刑事責任の追及につながっていく場合があるとされていますので、実質的には黙秘権という基本的人権が奪われているので す。

またこの制度では、患者さんが亡くなったとき、それが異状なら届け出なければならず、届出を怠ると処罰されます。しかしその「異状」とはどういうものなのか、充分に議論されておらず、はっきりしていません。

医療は不確実で、不幸な出来事は数多くあります。その場合に、何を届け出たらよいのか分からないままである上に、黙っていても、また調査に応じても、その 結果により何らかのペナルティが加えられるかも知れないのでは、医師は安心して、自信を持って医療を行うことができません。

医師の日々の仕事が綱渡りのように危険で、いつペナルティを受けるかも知れないとなれば、だれも危険を伴う、結果が不確実な、そういう医療を行おうとしな くなります。新しいことに挑戦しよう、人命を助けるために危険を乗り越えよう、そういう精神は失われていくでしょう。

医師は、本来の使命である医療を行いたいという意欲も志も失い、そういう事故が起きる可能性がある医療の現場で働き続けようという医師が少なくなってしま います。病状が重い患者さんの医療や新しい医療の技術は敬遠され、助かるはずの患者さんが医療を受けられないということにつながるかも知れません。それ は、日本に暮らす皆さんにとって、よいことではありません。

まとめ

医療に関わる事故で患者さんが亡くなったり不幸な出来事が起こったとき、起こった出来事の科学的な解明が必要です。解明された結果は、医療での不幸な出来 事の再発防止と患者さんやそのご家族、日本に暮らす皆さんの理解、納得のために活かされなければなりません。

その目的は、1) 医療を提供する側と受ける側の間の溝を埋め、軋轢を減らすこと、2) 不幸な出来事の再発を防ぎ、医学医療を発展させることといえるでしょう。そしてこれらのことが、真に日本に暮らす皆さんの生命、健康のためになるのです。

人体は神秘に満ち、医療は高度に専門的で、事例ごとに千差万別です。医療に問題が起こった時、その原因や背景は複雑です。
1) 医療事故の調査解明、
2) 再発防止策の検討と確立、
3) 不幸な出来事に見舞われた患者さんとご家族の支援、
4) 医療を受ける側の理解と納得を得ること、
これらのための制度や組織を、充分に時間をかけ、広く医療の現場からの意見を集約し、検討を重ねて作り上げていかなければなりません。

現在考えられている制度では、そういう理想にはほど遠いどころか、崩壊しつつある日本の医療の息の根を止めてしまうことを強く心配します。厚生労働省の 「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案 - 第二次試案 -」をもとにした自由民主党の「診療行為に係る死因究明制度等について」の制度化には、反対します。 

 

H18.1.15  全国医師連盟 設立準備委員会

2008-01-15

全国医師連盟設立準備委員会 決起集会 無事終了

【2008年1月15日】

全国医師連盟 若手医師、現場の窮状を訴え決起
RisFAX2008/01/15

 若手勤務医が中心となって設立する「全国医師連盟設立準備委員会」(世話人=黒川衛・長崎県真珠園療養所勤務医)は13日、都内で総決起集会を開催。医 療事故の温床となる過酷な勤務医の労働環境の改善や、医療崩壊を加速させる医療費抑制政策に反対を表明した。開業医の長老が幹部に就く日本医師会の封建的 体質では、医療費抑制の煽りを直接受ける現場の若手医師の考えは反映されないと、新組織を発足させ、日医の体制に問題提起する構え。全国医師連盟としての 正式な発足は、5~7月の予定で、今後組織を拡大し現時点での会員数の「10~20倍」の規模をめざす。

 準備委員会は昨年8月に設立。現場に立つ若手医師が過労死や医療紛争・訴訟問題を巡り、ソーシャル・ネットワーキング・サービスやブログなどインター ネット上で意見交換を展開していたことが会の設立に結びついたという。医師不足による過重労働などの改善を各方面に働きかけるためには新組織を立ち上げる 必要があるとの結論に至った。当初30余人だった参加者が12月には200人に、今月に入ってからは420人に達した。現在執行部5人、運営役員32人の 体制で、平均年齢は43歳、勤務医・研究医が全体の約8割を占める。開業医も「15~16%」いるという。

 黒川世話人は、医療崩壊は(1)医療費抑制政策(2)劣悪な医療労働環境(3)不公正な医療報道(4)医療裁判の低能力(5)医学界の封建制――といっ た要因が引き起こすと主張。さらに経済財政諮問会議の提言を重視する官邸主導の医療政策は、主役であるべき医師が不在だと指摘し、医療機関の株式会社化な ど規制緩和論議に懸念を表明した。さらに、新臨床研修制度の導入などは厚生労働省による「医師の官制コントロール」であると批判している。

 また、準備委員会は、米国やドイツなどにある「ドクターズユニオン」(労働組織)を国内にも導入することによって、労働環境の改善をめざしたい考えだ。 診療行為に関連した死亡の原因究明や再発防止を行う厚労省の「医療安全調査委員会」の第2次試案に日医が合意したことについて、診療関連死の届出義務化な ど勤務医や地域医師会では「コンセンサスは得られていない」として、第2次試案「反対」の立場をとり、対案を提示する考えを示した。ただ、黒川世話人は、 日医を実績のある「先輩の組織」と表現し、「対決するつもりはない。同業者として刺激し合える」と述べた。執行部には日医会員もおり、「日本医師会対全国 医師連盟」の構図は否定する。

2008-01-06

1.13決起集会(全国医師連盟設立準備委員会)

座位の夢想: 1.13決起集会(全国医師連盟設立準備委員会)

1.13総決起集会は、

東京ビックサイト
(東京国際展示場)
会議棟7階で行われます。

集会の名称

1.13 全国医師連盟 設立準備委員会 総決起集会

日時
開始 2008 年 01 月 13 日 13 時 00 分
終了 2008 年 01 月 13 日 17 時 30 分
場所  
東京ビックサイト(東京国際展示場)会議棟7階
http://www.bigsight.jp/general/access/index.html 
会議棟703号室http://www.bigsight.jp/organizer/guide/guide_meeting.html 
参加資格
準備委員会会員および新組織設立に賛同される方
(参加事前登録終了いたしました。)

集会内容
1 小松秀樹先生による医師への激励挨拶(約20分)
2 本田 宏先生による激励講演(約100分)
3 主催者による報告と行動提起


会費 医師 2000円、その他 1000円  
主催 全国医師連盟 設立準備委員会


2008-01-02

H20年度診療報酬改訂について


http://www.doctor2007.com/iken2.html




H19.12.30新聞各社より診療報酬改定に関する報道がされました。

以下は西日本新聞からの引用です。

『 診療所の再診料引き下げ 08年度診療報酬改定
 厚生労働省は29日までに、2008年度の診療報酬改定で、診療所の再診料を引き下げる方針を固めた。現在、再診料はベッド数が200床未満の病院は 570円なのに対し、診療所は710円と割高になっており、格差是正を図る。引き下げで浮いた財源を、産科、小児科といった病院勤務医の負担軽減対策など に手厚く配分する方針で、具体的な額は今後、与党などと調整して詰める。』




 診療所の再診料(技術料)減額という方針に対して、断固抗議いたします。

日 本の医師の技術料は、他の先進国と比べて突出して低い状態です。これ以上の減額は、診療所等の倒産を増加させ、それに連鎖して病院勤務医のさらなる労働疲 弊を呼び起こすものであり、到底容認できるものではありません。過去の厚労省による診療報酬の改訂において、重要性を考慮して特定分野の増額をおこなった という発表がたびたびなされてきましたが、常に何の効果も無い申し訳程度の上昇率であったという事実があります。今回の改訂の方針も総医療費を抑制するた めであるのは明らかです。この小手先の言い訳は、国民を騙す行為であり、国民の健康を軽視したものと言えるでしょう。開業医はもとより、当組織の大多数を 占める多くの勤務医も、今回の発表に対し、強い憤りを覚えております。
格差を是正すると言うのであれば、診療所の再診料引き下げではなく、病院の再診料引き上げで対応すべきです。その方が病院勤務医の負担軽減に繋がります。
また、もし財源が足りないと主張するのであれば、患者遺族の知りたい権利を保障するためという医療安全調査委員会新設にかかる莫大な費用を、国民の健康に直結 する現場医療にまわすべきです。

 

全国医師連盟 設立準備委員会 執行部

2008-01-01

新年明けましておめでとうございます。


個人的に忙しくなり昨年の12月に入ってからBlogの更新がほとんどできず申し訳ございません。
1/13に全国医師連盟設立準備委員会の決起集会があります。
http://www.doctor2007.com/recommend1.html

今年もどうぞ宜しくお願い致します。

上記イラストの著作権は井桁正雄さんに所属しており、無断転用はご遠慮ください。イラストをクリックすると全国医師連盟設立準備委員会の入会のページに移動します。